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パーフェクトスーツファクトリー

2008年7月16日(水曜日)

どうせなら一石投じてから死ね

カテゴリー: - リーダー @ 23時44分55秒

間じゃ最近、連日続く暑さやiphone発売なんかのニュースに沸いてたよな。
そんな中、ブックリーダーにとっちゃそれら全てが吹っ飛ぶような大事件が起こったんだ。

7月14日に、国語学者の大野晋氏が亡くなった。

大野氏は日本語研究に大きく幅広い功績を残した一流の学者だった。
その業績に対して、死に際したマスコミの小さい扱いはいかにも残念だったよ。

今回はその仕事を少しでも知ってもらうため、ってこともあるんだけど、ブンコとしても面白いものだから、今日はこの機会に番外編として取り上げてみたいと思うぞ。

日本語はどこからきたのか―ことばと文明のつながりを考える (中公文庫)
大野 晋
4122035376

「日本語練習帳」っていうのがベストセラーになったから、一般にはそっちの方が良く知られてるんだけど、それは新書だから、ブンコであるこちらを取り上げるぞ。

まあ、読んでどっちが驚くかっていったらこっちの方だ。
何ていったってこの本には「日本語は日本が起源じゃない」って書かれてるんだからな。

もっと詳しく言うと、この本には「日本語の元は、インド南部で話されていた(いる)タミル語」っていうことが書かれているんだ。
俗に言う"日本語タミル語起源説"だな。

タミルっていうのを親しみやすい例で説明すると、インド映画で「ムトゥ 踊るマハラジャ」ってあるだろ?

ムトゥ 踊るマハラジャ
K・S・ラビクマール
B00005FPOM

物凄く面白い映画で俺も大好きなんだけど、この映画で使われている言葉がタミル語だ。
だからこれら一連のシリーズは「タミル映画」って呼ばれてる。
そんな風に分けるだけあって、タミルは同じインドでも、北のほうのインドとは文化がかなり違うんだよ。

そんなタミルのタミル語が、どうして日本語の元だと大野氏が考えたかっていうと、これが日本語と驚くほど似てるんだよ。
文法とかそんなレベルじゃない。まあ文法も似てるんだけど、それだけじゃなくて、物の名前なんかもソックリなんだ。
どれくらい似てるかはブンコに当たってほしいけど、言葉だけじゃなくて例えば祭りなんかも、思わずこれ日本の祭りなんじゃないか、って思っちまうくらい共通点がある。

だがな、当然のことだけど、この説は他の国語学者から集中非難を浴びた。
大変な論争になったんだよ。かなり画期的な説だったからな。

事の真偽はオレなんかにはわからない。ただオレが思うのは、世の中ってのは学問の世界に限らず、保守的なもんだ。

生きてるとみんな自分の立場ってもんが自然と出来てきて、いつのまにかそれを守るのに精一杯になっちまう。
学問なんて特にそうで、本当は真理を得るための手段とか方法論に過ぎなかったものが、アイデンティティーにまでなっちまうんだな。
人は自我と化したものを脅かされるのを異常に嫌うもんだ。
それが何であれ、現状を維持しようとするんだよ。
だからただの反対意見じゃなくて反発になったり、悪くすると攻撃にまでエスカレートしちまう。
人間って弱いもんで、その弱い人間が集まってんのが人間社会なんだよな。

そんな中にあって、何かに一石を投じるっていうのは、相当な勇気を伴うもんなんだよ。
そう、今"一石を投じる"って言ったけど、優れた書物ってのは、優れた人が一石を投じた軌跡でもあるんだ。
それを読むこともまた、自分に一石を投じることになるんだよ。

だからみんなも、ブックリードを通じて、己に一石を投じ続けて欲しい。
ブンコキャンプがその手助けになれば言うことはないな。

みんな!最後まで良く頑張った!1,2,3,ヴィクトリー!


2008年7月2日(水曜日)

あ!

カテゴリー: - リーダー @ 23時47分19秒

回罪と罰(罪&罰)をとりあげたとき、「文学史上の名作とか深く考えずに、ミステリーとして読むこと」って言ったけど、そのわりにはミステリーをあまり鍛えてないことに気づいたんだ。

体鍛えるときも、フォームを整えるために基礎的で単純なトレーニングに立ち返ったりするだろ?それと同じで、たまに必要に応じて今回みたいにミステリーも取り上げていくからな。ついてこい!

亜愛一郎の狼狽 (創元推理文庫)
泡坂 妻夫
4488402143

自己批判ドットコムの読者で、というか普段小演劇を観ているような層(普通の若者〜40代くらいの層ってことだな)で、このブンコを知っているやつはそう多くないだろうな。

そんな、日本ミステリーの知られざる名作がこの「亜愛一郎」シリーズだ!
シリーズって言ったけど、これは短編集で、この「狼狽」を含めて3冊出てる。
面白さの質は変わらないからどれからでもいいけど、まあ普通名探偵「亜愛一郎」が初登場するこの「狼狽」から読むだろうな。

この文庫の読みどころは、ズバリ「すごくミステリーらしい」ってところだ。
言い換えると「ミステリーの面白さがすべて詰まってる」。

書いてある文章全部が伏線なんじゃないか、ってくらい巧妙に伏線が張り巡らせてあって、しかもそれが予想もしないところに収束されていく。
その上その手際が何ともさりげないんだ。
どうだ?これこそ"ミステリー"だろ?
これこそミステリーではあるんだけど、これらは、"優れた文学"の要素でもあるんだよ。

でも、読んでみるとそんなオーソドックスなミステリーって感じはしないんだ。
むしろミステリーとしては変わった読後感がある。
それは、例えば名探偵の名前"亜愛一郎(あ・あいいちろう)"って名前は、「もし名探偵名鑑に載ったときに絶対一番最初にくるように」って考えられた名前だ、っていうような、何ともいえないユーモア感覚にある。

そう、この亜愛一郎シリーズは、ユーモアと謎解きが融合された最良の例と言えるだろうな。
そういうことを踏まえて読むと、この作品がいかによくできたミステリーか良くわかる。

オレは今まで、ミステリーとか読書好きの人で、この亜愛一郎シリーズをつまらない、と言った人にお目にかかったことがない。
問題は、読んだ、って人にお目にかかった絶対数そのものが少ないことだな。
その辺の町の本屋に売ってるようなブンコじゃないけど、見かけたらまあ読んでみてくれ。
面白いミステリーを読む、ってことほど読書力を鍛える近道はないんだからな!

みんな!最後まで良くがんばった!1,2,3,ヴィクトリー!


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