とうとうあの最強の男が我々の前に姿を現した。
私は脳梗塞という病気の恐ろしさを知っている。皆さんも長嶋茂雄氏が発病以来半身麻痺に苦しんでいる姿を見ているかと思う。あれで脳梗塞としては軽い方だそうだ。
なんぼオシムさんが人類最強だと言っても(言ってるのは私一人かもしれないが)、長嶋氏よりも重い脳梗塞だったのである。いくら奇跡的な回復を見せたとは言え「私だったら絶対に会場になんか行かないのに」と当日は気が気ではなかった。
しかし私はすぐに、「私だったら」などと我々のような凡人と同列に考えた己の傲慢を恥じた。実際に我々の前に姿を現したオシムさんのこの表情はどうだろう。とても一度は死線を彷徨い、現在絶賛リハビリ中の重病人のそれとは思えない。やはりと言おうか翌日の新聞各紙は揃って「やつれた表情にも鋭い眼光」などと書きたてたが、見出しとしてはいくら何でも見たまんまであろう。
私は近頃良く聞く"眼力(めぢから)"という言い回しを全く信用していない。実際に眼力がある、と言われる人に会っても単に目が大きいだけだったケースが殆どであったし、そう言われている人に限って己の眼力なるものを強調しようと精一杯瞼を開いている様が却って哀れを誘うのだ。
だがしかし、試合会場に入っていくオシムさんの眼差しを見て、眼力なる漠然とした存在も信じてもいい気になったものである。
また杖をついているのが堪らない。実際に歩行補助のためなのだろうが、私は一瞬とうとう武器を持って来たのかと思った。
日本代表が下手な試合でもしようものなら、あの杖とあの眼光からビームを放射して(オシムビーム)グラウンドを焼き尽くしてしまったに違いない。
最後に、今回確認できたオシム語録を一つだけ。今後も、言葉で殺し目で燃やすオシムさんの最強伝説を剋目していきたい。チンコ!
□1月30日・日本代表対ボスニア・ヘルツェゴビナ戦でのオシム語録
・試合前は母国を応援すると言っていたアシマ夫人が日本を声援している姿を見て
「女性はいつでも考えが変わる」
・ハーフタイムに高円宮妃の訪問を受け立ち上がり、周囲に「座ってください」と促されて
「妃殿下の前では10時間でも立っていないと」