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モザイク団の三郎君(2)

 練習態度以外にも、三郎君(仮名)が他の大勢とは一線を画す点はいくつもあった。
 まず現在においては、唯一仮名で扱われていること。そしてモザイク団当時においては、歌が上手かったことである。
 
 一度、恐らく劇団員の誰か、今となっては当然のように誰だったか思い出せない劇団員の誰かの誕生日があった。
 その席で、三郎君は山本譲二の「みちのく一人旅」を熱唱した。

 それを聴いた私は興奮して「こんなに歌の上手い人は見たことがない」と、伝わりはするだろうが良く考えると意味のわからないことを本人に言った。

 ろくすっぽそれを確認する機会の無かったモザイク団当時には判らなかったが、共にスパゲッティ・シアター(自己批判ショーの前身)の活動を開始すると、歌のみならず演技も抜群に上手いことが判明した。

 以降私がことある事に唱えている「歌が上手い人が演技が下手なはずがない」という考えはこのとき芽生えたものである。
 現在はただの漠然とした考えではなく、確たる根拠と共にひとつの理論として形成されているが、その内容は私の小説第二弾「歌が上手い人が演技が下手なはずがない」で明らかにしたい。
 少なくとも現時点で明らかなのは、私の小説第二弾が「歌が上手い人が演技が下手なはずがない」なのが明らかな嘘だと言うことである。

 私はかなり早い段階で、彼がモザイク団の中で唯一、単なるアニメファンでないことを感じていた。
 殆どの人類がそうであるように、私もただのアニメファンで一生を終わるつもりは毛頭無かったので、モザイク団を早期に辞めていた可能性もあった。

 しかしそれを踏みとどまらせたのが、三郎君の存在だった。
 それは言い換えれば、私に就職→結婚→幸せな家庭という人並みの道筋から足を踏み外させた要因の一つ、ということでもある。

 のちのスパゲッティ・シアター結成にも彼が最も重要な役割を果たすのだが、それを語る前に一応付け加えておきたいのは、三郎という仮名は彼の父親の実名を拝借した、という、もしこの小説を読まれたら絶対に怒られる事実である。(つづく)

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